春風駘蕩
図書館戦争にずぶずぶはまり、とうとう二次の大陸に到着
SS 掴まれたのは [ 前編 ]
- 2010/11/13 (Sat)
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☆☆☆
SS 掴まれたのは [ 前編 ]
上官部下時代 県展後 カミツレデート前
季節は師走という慌しい時期に近づいていた。
世間では受験シーズンということもあり、来館者も増えている。
人が増えれば、トラブルも増える。
小牧の叫ぶ声がフロアに響いた。
「堂上!」
それと共に人が階段に体を打ち付けたながら落ちる音がして、
そして、ひどく鈍い音でとまった。
今日は手塚・笠原を業務部に貸し出しているので、館内警備のバディは堂上・小牧だった。
巡回で二階フロアに来たところに、アラーム音が鳴り響き、
蔵書窃盗犯が階段めがけて逃げてくる所だった。
小牧が窃盗犯を取り押さえた。
犯人はクソっと叫びながら、専門書が数冊はいったカバンを八つ当たりとばかりに階段めがけて放り投げた。
そこを運わるく、業務部の女性が上がってきていた。
あと数段でフロアに上がるという所で、カバンは女性の下腹部をかすめ、
女性はきゃっと小さい声をあげたまま後ろにバランスを崩しかけた。
犯人がカバンを投げた時点で体を浮かせていた堂上が彼女の手を取りフロアまで引き上げた。
その反動が思ったより大きく、階段下まで堂上が代わりに転がり落ちてしまったのだ。
そのまま前のめりの方が擦り傷と打ち身程度ですんだかもしれない。
受け身をとろうと体をひねったのが、逆に回転に拍車をかけてしまい、
階段脇の支柱に思いっきり後頭部を打ち付けて、堂上は気を失った。
手塚と郁は午前中の業務報告をしに戻っていた事務所で、堂上が救護室に運ばれた事を聞かされた。
小牧に「あのときと一緒だよ、自然に目覚めるだろうって」少し笑って郁の肩を軽くたたいた。
あのときとは、事務所で郁がやった大外刈りの事だ。
「だから心配しなくて平気だよ?」小牧は優しく笑いかけるが、当の郁にはプレッシャーにしかならなくて、苦笑いするしかなかった。
そのまま昼休憩に入ったので、手塚と郁は救護室まで堂上の様子を見に行った。
図書基地の救護室は広い。
「あ~。堂上くん?今日は3番ね」
救護室の看護士にいわれ、そっと3番救護室のアコーディオンカーテンを開けた。
うつ伏せで眠る堂上・・・の脇で座って堂上のその手を握りしめている業務部の女性。
その女性は郁と目が合うとパッと背を向けてその手を抱えこんだ。
「あ、すいませんっ」声をあげたのは郁だった。
郁は空けたままのカーテンをそのままにして、救護室から走りだしていった。
はぁはぁはぁはぁ。
庁舎を飛び出し、そのままグランドを一気に横ぎる。
茂みの間に座り込む。
はぁはぁはぁはぁ
郁の脳裏には、しっかりと先ほどの情景が焼き付いている。
ドキドキする
ときめきではなくて危険な方だってば!
どうしよう
本当に私・・・教官が好きなんだ。
どうしよう
胸が、胸が苦しい。
どうしよう・・・。
今はもう、頭がぐちゃぐちゃ。
何も考えたくないのに
あんな一瞬だったのに
黒い髪を少し上にゆっていて・・・きれいな白いうなじに華奢な肩。
そして教官の手・・・手を握る細い指に綺麗に塗られたネイル。
ただ嫌だった。ただ見たくなかった。
「もう・・・どうしよう・・・」
呟くと、そのまま膝を抱えるように座りこみ、熱くなった目頭を膝に押し付けた。
再び救護室
笠原は弾かれたように飛び出していった。
本当に駆け出すスピードは速いよな・・・
しぶしぶ開けっ放しのカーテンをきっちり閉めて、手塚は先ほどから動かない女性に向き直った。
「なにをしているんですか?」
「え?あのっ何って・・・」
手塚に話しかけられて、女はうろたえた。
「すいませんが、うつ伏せの状態で片手をそこまでもち上げられますと、
意識がないから抵抗はしませんが、手の筋に負担がかかりますし、
何より二正の身体が休まりません。」
胸元に堂上の手を握りしめた女性が、かっと顔を赤く染めた。
手塚が女性に近づいて行くと、彼女はやっと堂上の手を離してベッドに戻した。
「私・・・堂上二正に助けていただいたんです。」
「知っています。」
「だから、お礼も言いたくて」
その言葉に手塚はため息をついた。
「別に二正は業務として行った事ですし・・・
あとは気になさらないでください。
相手が誰であるか、選んで助けたわけではありませんので、
あなたが責任を感じる事はありません。
ですから、もう業務にもどられては・・・」
「あのっ私っ!」
「・・・・ん~~~かさはら・・・なにした・・・・」
「堂上二正?」
驚いた手塚が堂上を覗きこむように近づいた。
逆に女性は席を立ち、ベッドから離れていった。
「・・・手ぇ・・・離すな・・・かさはらぁ・・。」
カッカサ!!
・・・・聞かなかった。俺は何も聞かなかった!!
慌ててた手塚は「そういう事ですので!お気遣いなく」そう女性に向かい、一礼した。
・・・そういう事ってなんだ俺・・・
手塚は頭を下げたままで女性の速まる足音とアコーディオンカーテンの音を聞いていた。
[ 後編 ]に続きます。(11月15日の予定です。)
SS 掴まれたのは [ 前編 ]
上官部下時代 県展後 カミツレデート前
季節は師走という慌しい時期に近づいていた。
世間では受験シーズンということもあり、来館者も増えている。
人が増えれば、トラブルも増える。
小牧の叫ぶ声がフロアに響いた。
「堂上!」
それと共に人が階段に体を打ち付けたながら落ちる音がして、
そして、ひどく鈍い音でとまった。
今日は手塚・笠原を業務部に貸し出しているので、館内警備のバディは堂上・小牧だった。
巡回で二階フロアに来たところに、アラーム音が鳴り響き、
蔵書窃盗犯が階段めがけて逃げてくる所だった。
小牧が窃盗犯を取り押さえた。
犯人はクソっと叫びながら、専門書が数冊はいったカバンを八つ当たりとばかりに階段めがけて放り投げた。
そこを運わるく、業務部の女性が上がってきていた。
あと数段でフロアに上がるという所で、カバンは女性の下腹部をかすめ、
女性はきゃっと小さい声をあげたまま後ろにバランスを崩しかけた。
犯人がカバンを投げた時点で体を浮かせていた堂上が彼女の手を取りフロアまで引き上げた。
その反動が思ったより大きく、階段下まで堂上が代わりに転がり落ちてしまったのだ。
そのまま前のめりの方が擦り傷と打ち身程度ですんだかもしれない。
受け身をとろうと体をひねったのが、逆に回転に拍車をかけてしまい、
階段脇の支柱に思いっきり後頭部を打ち付けて、堂上は気を失った。
手塚と郁は午前中の業務報告をしに戻っていた事務所で、堂上が救護室に運ばれた事を聞かされた。
小牧に「あのときと一緒だよ、自然に目覚めるだろうって」少し笑って郁の肩を軽くたたいた。
あのときとは、事務所で郁がやった大外刈りの事だ。
「だから心配しなくて平気だよ?」小牧は優しく笑いかけるが、当の郁にはプレッシャーにしかならなくて、苦笑いするしかなかった。
そのまま昼休憩に入ったので、手塚と郁は救護室まで堂上の様子を見に行った。
図書基地の救護室は広い。
「あ~。堂上くん?今日は3番ね」
救護室の看護士にいわれ、そっと3番救護室のアコーディオンカーテンを開けた。
うつ伏せで眠る堂上・・・の脇で座って堂上のその手を握りしめている業務部の女性。
その女性は郁と目が合うとパッと背を向けてその手を抱えこんだ。
「あ、すいませんっ」声をあげたのは郁だった。
郁は空けたままのカーテンをそのままにして、救護室から走りだしていった。
はぁはぁはぁはぁ。
庁舎を飛び出し、そのままグランドを一気に横ぎる。
茂みの間に座り込む。
はぁはぁはぁはぁ
郁の脳裏には、しっかりと先ほどの情景が焼き付いている。
ドキドキする
ときめきではなくて危険な方だってば!
どうしよう
本当に私・・・教官が好きなんだ。
どうしよう
胸が、胸が苦しい。
どうしよう・・・。
今はもう、頭がぐちゃぐちゃ。
何も考えたくないのに
あんな一瞬だったのに
黒い髪を少し上にゆっていて・・・きれいな白いうなじに華奢な肩。
そして教官の手・・・手を握る細い指に綺麗に塗られたネイル。
ただ嫌だった。ただ見たくなかった。
「もう・・・どうしよう・・・」
呟くと、そのまま膝を抱えるように座りこみ、熱くなった目頭を膝に押し付けた。
再び救護室
笠原は弾かれたように飛び出していった。
本当に駆け出すスピードは速いよな・・・
しぶしぶ開けっ放しのカーテンをきっちり閉めて、手塚は先ほどから動かない女性に向き直った。
「なにをしているんですか?」
「え?あのっ何って・・・」
手塚に話しかけられて、女はうろたえた。
「すいませんが、うつ伏せの状態で片手をそこまでもち上げられますと、
意識がないから抵抗はしませんが、手の筋に負担がかかりますし、
何より二正の身体が休まりません。」
胸元に堂上の手を握りしめた女性が、かっと顔を赤く染めた。
手塚が女性に近づいて行くと、彼女はやっと堂上の手を離してベッドに戻した。
「私・・・堂上二正に助けていただいたんです。」
「知っています。」
「だから、お礼も言いたくて」
その言葉に手塚はため息をついた。
「別に二正は業務として行った事ですし・・・
あとは気になさらないでください。
相手が誰であるか、選んで助けたわけではありませんので、
あなたが責任を感じる事はありません。
ですから、もう業務にもどられては・・・」
「あのっ私っ!」
「・・・・ん~~~かさはら・・・なにした・・・・」
「堂上二正?」
驚いた手塚が堂上を覗きこむように近づいた。
逆に女性は席を立ち、ベッドから離れていった。
「・・・手ぇ・・・離すな・・・かさはらぁ・・。」
カッカサ!!
・・・・聞かなかった。俺は何も聞かなかった!!
慌ててた手塚は「そういう事ですので!お気遣いなく」そう女性に向かい、一礼した。
・・・そういう事ってなんだ俺・・・
手塚は頭を下げたままで女性の速まる足音とアコーディオンカーテンの音を聞いていた。
[ 後編 ]に続きます。(11月15日の予定です。)
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