春風駘蕩
図書館戦争にずぶずぶはまり、とうとう二次の大陸に到着
SS 入寮の日 [2]
- 2010/07/24 (Sat)
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~続きです~
そんなとき、彼女の背後から「あれ?君!受かったんだ!」といかにもラクビーやってましたという感じの青年が話しかけてきた。
「あれ?えっと。。。」驚いた後には戸惑いの顔になった。
「なに?覚えてないの~~?面談時にさ、ほら待ってる間に廊下で話したじゃん!」
体育会系によくある腹からでるその大声に、堂上もひそかに眉をよせた。
「あ?あ~ぁあ?」
「えぇ?!俺達、結構長く話したよね?忘れちゃったのぉ~?」
「ごめん!私さ、人の顔を覚えるのが苦手でさ~。特にあの日は緊張してたし・・・あ、笠原っていいます。よろしく!」
「ぷっ!あの時も自己紹介したんだけどなぁ~。まぁいいや、もう一回ね。俺、西尾です。・・・・・ね?笠原なにちゃん?ほら、名前!あの時は聞きそびれちゃったから教えてよ!」
「え?・・・・・・・・・・郁だけど。カサハライク」
「イクチャンかぁ~!」彼女はこのなれなれしさにはむっとしたらしく
「カサハラって呼んでくれる?慣れてないんで、自分の名前を呼ばれるのってさ」
少しトーンが低くなった。しかし相手には通用しなかったようだ。
「あ、あそう?じゃそうするよ。カサハラね!」とさっきよりもはしゃいだ感じが増している。
新聞越しに聞くその声も、耳にこそばゆい。
「くっくっくっく・・・そうか、顔を覚える苦手なんだ~。良かったね堂上?」
背後から当たり前のように話掛けられ、思わずむっとしてしまった。
「・・・・・・小牧・・・貴様いつからそこにいた?」
「ん?言っておくけど、来たのは堂上のほうが後だよ?」
「む・・・。」
「でも良かったね、あのときからそんなに顔が老けたのかとか、人相が変わったのかとか、もう鏡の前で悩まなくていいね!」
「おまぁ!それを!もういいっ!」いらだちながらも声を押さえて話すと、やはりこの友人は思いっきり上戸にはいった。
「ぶはぁ!どうじょ~~~~かわいい~~~~!!ひぃ~~~!」
げらげらと上戸に入った小牧にその場にいた人たちの視線が集まる。
堂上は、あわてて新聞で上体を隠し、それがさらに小牧の上戸を煽った。
・・・しばらくは・・・そばで暮らせる。
君の笑顔。君の笑い声。君のしぐさ。
もうあのときの女子高校生ではないことはわかっている。
そして俺も、もうあのときの三正ではない事もだ。
「あーごめん。もう部屋に荷物入れたいし、またね。えっと。。。」
「あ、そこの入り口まで俺が持つよ。俺、ニ・シ・オ・・・西尾ね」
「はぁ?いいわよ自分で運ぶから。じゃね!西尾くん」
西尾くんとやらからダンボールを取りかえし、今度は軽々と肩に担いで歩き出した。
俺の前を通り過ぎる。
我慢できずに新聞から顔を上げてしまった。
絡まる視線。
ほんの少し、わずかな時間、たったの数秒。
それだけでいい。
少しだけ、少しだけ。
こうして再び逢えたことを、追いかけてきてくれたことを、
喜びたかった。
入隊式が済めば、俺は君を追い出す作業に移る。
君の夢をあきらめさせる為。
君の夢が・・・・君を傷つけないように。
外や中の戦闘から君を遠ざけるために。
「おい、あれか?」
その声に顔を上げると緘口令を飲んでくれた上官の一人だった。
「はい」
上官は無言で肩に手を置くと、部屋へと帰っていった。
彼女の入隊が決まったとき、俺は緘口令をひいた。
でも皆に黙っていてもらうのはしばらくの間だ。
ほんのしばらくの間・・・。
それが済めば、
サヨナラ だ。
心が重いのは気のせいだ。
---うれしそうに扉を開けた彼女が・・・
心が重いのは気のせいだ。
---少し驚いて・・・迷惑そうに顔をゆがめ・・・
心にまとわりつく。
---背中を伸ばしてまっすぐ前を見つめて・・・。
心に。
---視線が絡まった瞬間の瞳の色・・・。
すでに焼きついてしまった。
ならば封じ込めよう。
焼きついてしまった、この心ごと。
俺は決めた。
彼女への想いも記憶も何もかも。
ここにいてはいけないという思いのほかは全て。
心の小箱につめこもう。
そして、鍵を掛けて
深く・・・深く沈めてしまおう。
ただ、今日だけは。
今だけは。
君との再会を喜ばせてくれ。
入隊おめでとう。 笠原郁。
END
そんなとき、彼女の背後から「あれ?君!受かったんだ!」といかにもラクビーやってましたという感じの青年が話しかけてきた。
「あれ?えっと。。。」驚いた後には戸惑いの顔になった。
「なに?覚えてないの~~?面談時にさ、ほら待ってる間に廊下で話したじゃん!」
体育会系によくある腹からでるその大声に、堂上もひそかに眉をよせた。
「あ?あ~ぁあ?」
「えぇ?!俺達、結構長く話したよね?忘れちゃったのぉ~?」
「ごめん!私さ、人の顔を覚えるのが苦手でさ~。特にあの日は緊張してたし・・・あ、笠原っていいます。よろしく!」
「ぷっ!あの時も自己紹介したんだけどなぁ~。まぁいいや、もう一回ね。俺、西尾です。・・・・・ね?笠原なにちゃん?ほら、名前!あの時は聞きそびれちゃったから教えてよ!」
「え?・・・・・・・・・・郁だけど。カサハライク」
「イクチャンかぁ~!」彼女はこのなれなれしさにはむっとしたらしく
「カサハラって呼んでくれる?慣れてないんで、自分の名前を呼ばれるのってさ」
少しトーンが低くなった。しかし相手には通用しなかったようだ。
「あ、あそう?じゃそうするよ。カサハラね!」とさっきよりもはしゃいだ感じが増している。
新聞越しに聞くその声も、耳にこそばゆい。
「くっくっくっく・・・そうか、顔を覚える苦手なんだ~。良かったね堂上?」
背後から当たり前のように話掛けられ、思わずむっとしてしまった。
「・・・・・・小牧・・・貴様いつからそこにいた?」
「ん?言っておくけど、来たのは堂上のほうが後だよ?」
「む・・・。」
「でも良かったね、あのときからそんなに顔が老けたのかとか、人相が変わったのかとか、もう鏡の前で悩まなくていいね!」
「おまぁ!それを!もういいっ!」いらだちながらも声を押さえて話すと、やはりこの友人は思いっきり上戸にはいった。
「ぶはぁ!どうじょ~~~~かわいい~~~~!!ひぃ~~~!」
げらげらと上戸に入った小牧にその場にいた人たちの視線が集まる。
堂上は、あわてて新聞で上体を隠し、それがさらに小牧の上戸を煽った。
・・・しばらくは・・・そばで暮らせる。
君の笑顔。君の笑い声。君のしぐさ。
もうあのときの女子高校生ではないことはわかっている。
そして俺も、もうあのときの三正ではない事もだ。
「あーごめん。もう部屋に荷物入れたいし、またね。えっと。。。」
「あ、そこの入り口まで俺が持つよ。俺、ニ・シ・オ・・・西尾ね」
「はぁ?いいわよ自分で運ぶから。じゃね!西尾くん」
西尾くんとやらからダンボールを取りかえし、今度は軽々と肩に担いで歩き出した。
俺の前を通り過ぎる。
我慢できずに新聞から顔を上げてしまった。
絡まる視線。
ほんの少し、わずかな時間、たったの数秒。
それだけでいい。
少しだけ、少しだけ。
こうして再び逢えたことを、追いかけてきてくれたことを、
喜びたかった。
入隊式が済めば、俺は君を追い出す作業に移る。
君の夢をあきらめさせる為。
君の夢が・・・・君を傷つけないように。
外や中の戦闘から君を遠ざけるために。
「おい、あれか?」
その声に顔を上げると緘口令を飲んでくれた上官の一人だった。
「はい」
上官は無言で肩に手を置くと、部屋へと帰っていった。
彼女の入隊が決まったとき、俺は緘口令をひいた。
でも皆に黙っていてもらうのはしばらくの間だ。
ほんのしばらくの間・・・。
それが済めば、
サヨナラ だ。
心が重いのは気のせいだ。
---うれしそうに扉を開けた彼女が・・・
心が重いのは気のせいだ。
---少し驚いて・・・迷惑そうに顔をゆがめ・・・
心にまとわりつく。
---背中を伸ばしてまっすぐ前を見つめて・・・。
心に。
---視線が絡まった瞬間の瞳の色・・・。
すでに焼きついてしまった。
ならば封じ込めよう。
焼きついてしまった、この心ごと。
俺は決めた。
彼女への想いも記憶も何もかも。
ここにいてはいけないという思いのほかは全て。
心の小箱につめこもう。
そして、鍵を掛けて
深く・・・深く沈めてしまおう。
ただ、今日だけは。
今だけは。
君との再会を喜ばせてくれ。
入隊おめでとう。 笠原郁。
END
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